「なぁタカヤー。何が欲しい?」
三回目、くらいだろうか。同じことを繰り返し聞かれてそろそろ耳にたこが出来そうだ。
「何もいりません。気持ちだけで十分です」
「なんだよー、何か贈らせろよ。オレの気持ちムゲにする気かよ」
「押し付けがましいですね。というかあんたの口から『無碍』って言葉が出てくるとは思いませんでした」
「なー、なんでもいいから言っちまえよ。現ナマン万円は無理だけど。『お手伝い券』とかでもいーからさ」
「……オレの勉強を邪魔しない券が欲しいところですね」
元希さんは後ろからオレの首に腕を回し(殆ど羽交い絞めだ)、肩に頭を載せたまま喋っている。
75kgにのしかかられるのはそれなりにしんどい。
「ハァ!? ナンデ!? 折角の誕生日じゃん!」
「あんたのための誕生日じゃありません。誕生日を強調するならもっと尊重してください。つーかオレテスト期間だって言いましたよね」
耳元でキンキンする声でがなり立てるのをあしらうが、なおもこの大きな子供は噛み付いてくる。
「それ数学だろ。お前勉強しなくたってヨユーじゃん」
「甘いっスね。取れるところで取っとくんです。それに念には念をって言うでしょう」
「……お前、すっげーやらしいのな」
「お褒めに預かりまして」
そこで、元希さんが黙った。
欲を言えばどいてくれるのが最良なのだが、静かになっただけ大分マシというものだ(時計の音さえ聞こえる)。
「んじゃー、わかった」
またうんうん唸り出したかと思えば、左から伸ばされた手がおもむろにノートとペンを引ったくり、あろうことかページを破いた。
「ちょ、あんた何するんですか!」
「白いページだったからいーだろ。……うし、完成。『添い寝してやる券』!」
「……ハァ?」
「誕生日なんだから体大切にしろ。日付変わる前に寝ろ。ほらあと15分!」
「もはや誕生日関係ないですよねそれ」
「数学明日じゃないんだろ?」
「……ちゃんと聞いてたんじゃないですか」
気付けば、元希さんが長い指で灯を消したところだった。
「さーん、にーい、いーち」
なんだかどうでもよくなって、ノートを閉じて寝転んだ元希さんの上に思い切りダイブした。










2006/12/11 Happy birthday Takaya!!