【ノーマルエンド 1 -春の光-】
 そんな章タイトルがアドベンチャーゲームのように頭の中の画面に流れて終わる。そんな夢を見るのはもう三度目になる。
 沈み込んだ気分のまま身を起こす。目覚ましの設定より20分ほど早い。寝巻にしているTシャツとジャージよりもう少しましなTシャツとジャージに着替えながら夢を思い出そうとしてみる。とてもベタな、ベタだからこそ手堅い設定だった。自分自身がそれ以外の終わりを想像できない、だからこそのノーマルエンド。すなわち成宮鳴の卒業する日。
 夢を見るのはまともな会話をしていないせいだと自分でわかっている。会話自体はしている。文字数にすれば結構な量になる。が、どうでもいいような、当たり障りのない会話だけ、だ。あの幼子のような先輩が『煙に巻く』などという行為に出ている。だから、このまま関係が停滞した先にあるであろう未来を夢として見た。シンプルな話だ。
 現実として思い描くと震えが来た。洗面所の鏡には、ひどい顔をした自分がいた。
 外で喧噪が聞こえる。朝練の指定時刻に先んじて張りきった何人かが表に出ているのだろう。緩慢な動きで歯を磨いていると、耳の中に、どうしても間違いようのない声が飛び込んできた。夢で会っていたあの人の。
 自分の都合のいいようにか、夢の中ではほんの少しだけ未練があるようなそぶりが見えた気がする。ただその顔だけが思い出せない。
 口を漱ぎ、雑に顔を洗う。行かなくては。フラグをへし折りに。






2014/05/18