最初に与えられたのは名前と姿と声だけ。
だからレンに“自分たちが最初から持っているものは何だと思う”と聞かれたときもそう答えた。
「普通セットだよねぇ?」
「は?」
「名前と、姿と、声」
名前は別にしても、姿と声は変質していくものではなかろうか。同時に変わっていくことを思えばセットではあるけれど。
ただ、ボーカロイドに関して言えば、確実にセットだ。
「この声は、鏡音レンの声。この声が、鏡音レン。まぁ、ちょっとリンに似てるけど」
「うん」
「リンと図鑑見てたんだけどさぁ」
いきなり、話題が変わる。レンの頭の中は覗けないけれど、きっと不思議な構造をしている。それとも14歳はみんなこんな感じなのだろうか。
「仏法僧って鳥がいてね」
「すごい名前」
「でも「仏法僧」って鳴かないんだよ」
「いや、そりゃ鳴かないでしょ」
レンだって「レン」って鳴かないし。
「でもいるんだよ」
「何が?」
「仏法僧って鳴く鳥。仏法僧とは別の鳥だけど」
不思議だよなぁ、と感慨深げにレンが唸る。
「別の誰かのためみたいな声なんだよ。その声がふさわしいのが他にいるのに」
でも。
「でもそれが、自分の声なんだよな」
そう、そしてそれは決して悪いものじゃない。
だから声を。声に乗せて、
「レン」
「呼んだだけじゃん」
お気に召さなかったらしい。








某方とやってたボカロサイトに載せてたものです。ぼかろむずい。

2008/05/31→2010/07/08 収納